影の書(Book of Shadow)

魔女というと「影の書」という言葉を思い浮かべる人もいると思います。

日本の魔女用語というのは最初に日本に紹介した人の勘違いや、誤解から本来とはまるで違う意味で定着してしまったものも多くあります。この「影の書」という言葉もその代表的なもののひとつです。

魔女が秘密のレシピや儀式や呪術(スペル)の方法などを書いている個人のノートの事を「影の書」と呼んでいる人が日本には多いのですが、これは間違いです。

本来「影の書」はカヴン(魔女の団体・グループ)などの団体に1冊のもので、結構大きなものです。そして、そこに所属する魔女たちは先輩から指定された必要な部分を自分の専用ノートに書き写すのです。そしてこうした個人のノートのことを「影の書」とは呼ばないのです。

では、なぜ日本ではこのような間違いが定着してしまっているのでしょう?これはおそらく、個人のノートを「影の書」と呼ぶと誤解して神戸の某大御所占い師が40年ほど前に自分の著書や当時主催されていた「魔女講座」のテキストの中などで広めてしまったのが一番の原因だと思います。そして、当時は実在する魔女についての情報は非常に乏しく、彼の魔女講座や著書は当時の魔女に関心を持った人たちに多大な影響を与えていました。そして、多くの日本人魔女たちは彼の情報に従ってスタートを切っていたのです。ですから1970~80年代に魔女の修行などのスタートを切った人たちのほとんどはその影響を強く受けていたのです。

やがて、2000年代始めにインターネットが爆発的に普及し、ネット通じて、洋書も個人で簡単に輸入できるようになり、海外の魔女たちと直接コンタクトをとることもできる時代になりました。ここで、古くからの日本の魔女たちの間違いを正す情報やきっかけが次々とえられるようになったのです。

さて、ついでなので魔女が各々持っている個人のノートについて少し書いておこうと思います。

個人のノートはカヴン等に所属している人は自分のカヴンの影の書から、最初からソロの場合には自分が本で調べたものにアレンジを加えたりしたものを書き写したりします。

個人のレシピ(インセンス、オイル等々)は別のノートにする人もいますし、同じノートに書く人もいます。カヴンに所属している場合は一緒に書くべきか、別のノートを作るべきかは先輩から教えられ、それに従うようにします。

儀式次第などとレシピなどを同じノートに書く、と言えば、以前ある外国人の魔女が「ノートの表紙から順にカヴンの影の書から写したもの、裏表紙から順にレシピや自分が実践したスペルなどを書いていくという方法を初心者用として習った」という話を聞いたことがあります。

それを聞いて「使いやすいの?」と聞いたら、笑いながら「いや」と答えていました。でも、それはあくまでも「初心者の最初の1冊目」のための方法らしく、それには使いやすさとは無縁のそのカヴン独自の意味(内容は書けませんが、教えてもらって妙に納得しました)があってのことだそうです。もちろん、2冊目からはそういう使い方はしないと言っていました。

この個人のノートを「影の書」と呼ばないことは分かったとして、それではこのノートのことを何と呼んだらよいのでしょう?

実はこれには色々な名前を付けている人もいますが私の場合は師匠が「秘密のノート」というなんのひねりもない呼び方で統一していたのでそれを継承(というほどのものだろうか?)しています。

こうした事情を知った上であくまでも「かっこいいから影の書と呼ぶ」という人もいます。まぁ、そうしたい人を止める必要はないのでそれはそれでいいのかもしれません。子供に一生恨まれるようなキラキラネームやDQNネームだって親に「名前を付ける権利がある」のと同じで自分の持ち物にどんな名前を付けてもそれはそれで個人の自由ですし。

ただ、私は将来自分が海外のまじょたちと交流を持つようになったときに不便を生じないように別の名前を付けておくほうが良いと思います。少なくても本来の使い方からすれば間違いなのですから、わざわざ間違った名前を付ける必要もないからです。

こうした日本ならではの間違いなどもまた少しづつ書いていこうと思います。

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